2017年 冬期講座

更新日:2017年5月9日

北海道 朋仁会 整形外科北新東病院 顧門
廣田 誼(整形外科医 医師)

2017年1月21日から4月2日まで、福岡市博多で6回に分かれて開かれた日本リンパ浮腫緩和協会主催の冬季講座に参加しました。
私は昨年12月に札幌の整形外科病院の理事長をリタイアして顧問となりました。そのような状況の中で自分に何が出来るか考えた末に、外来でたびたび見かけることがある下肢の浮腫みに対して本格的に取り組みたいという気持ちになりました。

私の背中をやさしくそして強く押してくれた一言

たまたま インターネットで検索して福岡市博多でリンパ浮腫の複合的治療の実技の講座が開かれることを知り、思い切って応募しました。その後いろいろな事情があり、参加することを90%は断念しなければならないと思ったこともあったのですが、協会の大塚理事 長が直々に私に参加するようにメールを送って下さいました。ドイツでは整形外科疾 患に対して普通にリンパドレナージや多層包帯法が行われており、特にTKAの術後は良好な成績が出ているということでした。わざわざ文献まで添付してくださいました。 私の背中をやさしくそして強く押してくれた一言でした。

会場は福岡商工会議所でした。朝8:30に教室に入ると17人程の生徒は私以外すべて女性で、看護師さんPT ,OT の方たちでした。私は女性たちの中で、戸惑いや不安を感じながら講習に参加しましたが、大塚理事長、佐藤先生そして生徒の皆さんの熱い エネルギーを感じることによって、次第に前向きに授業に参加できるようになって行きました。
本当に筆舌に尽くしがたいすばらしい講義や実技指導が展開されていきました。
先生方は今まで感じたことが無いほどヒューマニズムの精神を根源に持っていて、民主的なコミニュケーションが徹底していました。また非常に高いレベルのユーモアの能力を持ち合わせていました。勿論、技術力では世界の誰にも負けないと自負されていました。この組織はすごい、きっとさらに大きく発展するに違いない。私は最初の講座を受けた日にそう思いました。

入門クラスはリンパ管についての講義と徒手リンパドレナージの技術実習でしたが、2 日間はあっという間に過ぎてしまいました。
初級クラスでは徒手リンパドレナージについて集中的な指導が行われました。私の痩せこけて傷跡だらけの体に対しても先生方や生徒の皆さんは、いやな顔一つせずに接してくれました。看護師さんや PT,OT の 女性は職場で忙しく働きながら、さらに家庭や子供に対する仕事をこなしながらの講 座参加だと考えると頭の下がる思いでした。全員が志の高い人たちばかりでした。ま た先生方が宴会のためにリーダーやアシスタント(丁稚と呼ぶことになっていました が)を指名しましたが、その時の先生方の人選のすばらしさに、なんと鋭い感覚で人を 見て判断しているのかと舌を巻きました。技術練習が行われましたが、MLD(徒手リ ンパドレナージ)はなかなか難しいです。ポンプ、サークル、ロータリー、スクープなどの手技を学びましたが、気を抜くと姿勢がおかしくなったり、肩に力が入ったり、手 が滑ったりします。私は最終試験まで手が滑っていました。 初級クラスの11日目の終わりにリーダーが懇親会を準備してくれました。 懇親会は松葉ガニ食べ放題のレストランで、話が盛り上がり大変楽しい雰囲気でした。

一般的に北海道の人と九州の人は大変気が合うような気がしています。なぜだかはっ きりした理由は分かりませんが、九州の人たちには人情が大変厚いと思います。 大塚先生と、佐藤先生が私を二次会に誘ってくれました。そこで先生方がどのようにしてリンパ浮腫と取り込むようになったかを語ってくれました。直接ドイツに勉強に行き大変苦労されて技術を身につけて、現在の協会を立ち上げた話を聞いて、私は身が引き締まる思いがしました。中途半端な気持ちでこの講習を受けては絶対にいけない。整形外科的に複合的治療法を利用することは大事なことでは有るが、悪性腫瘍後のリンパ浮腫に対しても真摯に取り組まなければならない。私は心の中で密かにそう 誓いました。

中級クラスは多層包帯法に集中しました。ネット包帯、スポンジ包帯、ショートストレッチの包帯と巻いていくのですが、適正な圧が加わり、かつ中枢に向かって圧が小さくなるように圧勾配をつけることは、やはり非常に難しいことでした。またすぐに皺 がよってしまい、見た目も醜くなってしまいます。2日間汗だくになって夢中で包帯を 巻いていました。

先生方の技術の高さを知ることが出来ました

上級クラスはさすがに上級クラスにふさわしいものでした。リンパ節郭清されたと 仮定して、どの方向にどのように MLD を行うかと言うものでした。昔より暗記力が大幅に低下している私にとって手順を記憶することは不安でしたが、ペアを組んでくれた生徒の皆さんが、私の間違いを遠慮しないで指摘してくれたことや、私も遠慮し ないで先生方に質問することによって、何とか手順を覚えることが出来ました。 私は時々手術後下肢が腫れている人や、浮腫がある人を診察していましたので、なる べく早くに正確な圧で包帯を巻きたいと思い、ヘソクリを叩いてイタリア製のピコプレスと言う圧計測器を購入することにしました。丁度ナック商会の看護師出身の人が講習に参加していたので比較的スムーズに割引価格で入手出来ました。しかしながらピコプレスが有っても、多層包帯は包帯の基礎が出来なければ正確な圧が出来ないことがわかり、とにかく時間のあるときは病院でも家でも必死に包帯を巻き続けました。

上肢に浮腫がある患者さんに先生方が直接 MLD や MLLB(多層包帯法)を行う臨床実習もありました。2つの治療法の効率的な組み合わせや、先生方の技術の高さを知ることが出来ました。またナック商会をはじめ数社による圧迫着衣の展示説明会が行われ着衣の種類の多さ、使い方の実際を学ぶことが出来ました。 最終回の4月1日は前回中止になった下肢の浮腫に対して臨床実習が行われました。 やはり MLLB と MLD を組み合わせた治療が行われましたが、患者さんが帰り際に 佐藤先生に下肢が軽くなったので何回でも講義に協力しますと言っていたことが印象 的でした。

最後の日の午前中は、試験に臨むために皆ただ夢中でMLD,MLLB の練習 に励みました。前の日にホテルで朝の 3 時まで練習していた看護師さんもいて緊張感 が教室に満ちていました。最終日の午後にいよいよ試験が始まりました。平常心を保とうと思っても、やはり試験は緊張するものです。先生方もいつもと違う出で立ちで、それがさらに緊張感を高めました。試験後に大塚理事長から個別の評価が発表されましたが、私は手が滑っていると言うことでした。本当に身も心も上滑りしていたことを深く反省しました。最終的に全員合格と言われた時には、嬉しくて、この年になると 涙は涸れ果てていて出ませんでしたが、心の中では泣いていました。自分も頑張った けれども同期の皆さんも本当に頑張ってやってきたと思います。

最後に大塚先生、佐藤先生、そして斉藤先生はじめ実技指導をしてくださった先生方、同期の皆さん、本当にありがとうございました。私たちの関係はこれで終了ではなくて永遠に繋がっていくものと信じています。先生方にはこれからもますますお世話に なると思いますので、今後も宜しくお願いいたします。

Vayan ustedes con Dios ! (練習の時に BGM でかかっていたこの音楽、今も耳にくっついています)